年々レースの走破タイムが速くなっている背景に、調教での時計も速くなっている事を書いたが、日々の予想に調教時計を活かそうと思うと、どうしたモノか。
先に書いた通り、A.ベイヤーの本が元で走破タイムの指数を予想のファクターに使っている。であるならば、調教の時計も同じように基準タイムと馬場指数を設定して、日ごとにどれぐらい時計の掛かる馬場だったかを算出して力業で頑張るか…とも考えたが、現実的には不可能に近い。まず、調教はほぼ毎日行われている。月曜など休みの場合はあるが、火曜でも土曜でも頭数が少なくても多くても調教は行われている。さらに、調教の時計を見ていただくとわかるが、レースのように1つではなく、ラップの推移。「最初飛ばしてしまいバテる」という事もあれば、「最初ゆっくりで終い重視」だったり、レースでは全力疾走が前提だが、調教は「一杯」以外にも「馬なり」などで目一杯力を出しての追い切りというモノでもない。
そこで思いついたのが、要はその馬自身の過去の調教時計と比較して、速くなっているか遅くなっているかがわかれば良い。基本的に厩舎によって追い切られる曜日が決まっていて、大体いつも同じ曜日に追い切られる。テンが速いのか、終いが速いのか、全体的に速かったのかがわかれば良いので、「同じ日の同じ調教場所で追い切られた全頭のデータから、各ラップごとの偏差値を出せば、その時計ごとに速いか遅いかがわかる。後は全体時計をについては、偏差値の平均で総合評価。さらに、一杯に追えば速い時計は出、馬なりなら逆に速い時計は出にくいので、強さによって補正をかける」というモノ。
何を言っているんだ?と思われるかもしれないので、説明する。まず、サンプルとしてアーモンドアイの最終追い切りだけを抜粋したデータだが、
レース日付・レース名 | 調教日付 | 場所 | 時計5 | 時計4 | 時計3 | 時計2 | 時計1 | 強さ |
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2019/6/2・安田記念 | 2019-05-29 | 南W | 81.8 | 65.8 | 50.7 | 37.0 | 11.8 | 仕掛 |
2019/10/27・天皇賞秋 | 2019-10-23 | 南W | 65.8 | 51.2 | 37.2 | 12.4 | 馬也 | |
2019/12/22・有馬記念 | 2019-12-18 | 南W | モヤ | |||||
2020/5/17・ヴィクトリアマイル | 2020-05-13 | 南W | 64.6 | 49.8 | 36.8 | 12.3 | 馬也 | |
2020/6/7・安田記念 | 2020-06-03 | 南W | 66.8 | 51.8 | 38.1 | 12.3 | 馬也 | |
2020/11/1・天皇賞秋 | 2020-10-28 | 南W | 64.9 | 50.7 | 37.2 | 12.3 | 馬也 |
有馬記念の時の最終追い切りの時はモヤでタイムの計時不能だったので、パッと見で5つの時計を比較すると、ヴィクトリアマイルの時計が速い。じゃぁどの程度速かったのか、各調教日ごとの全頭の南Wでの追い切りの平均時計を比べてみると、
調教日付 | 場所 | 頭数 | 平均時計5 | 平均時計4 | 平均時計3 | 平均時計2 | 平均時計1 |
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2019-05-29 | 南W | 423頭 | 69.2 | 54.2 | 40.0 | 13.2 | |
2019-10-23 | 南W | 490頭 | 69.1 | 54.2 | 40.2 | 13.2 | |
2019-12-18 | 南W | 446頭 | 68.3 | 53.3 | 39.6 | 13.0 | |
2020-05-13 | 南W | 463頭 | 68.2 | 53.3 | 39.5 | 12.7 | |
2020-06-03 | 南W | 458頭 | 68.8 | 53.8 | 39.9 | 12.9 | |
2020-10-28 | 南W | 515頭 | 69.2 | 54.3 | 40.3 | 13.1 |
実はヴィクトリアマイル週の2020/5/13の南Wは全体的に時計が出やすかった事がわかる。この平均は偏差値50に相当する時計で、アーモンドアイの各時計の偏差値を出すと
調教日付 | 場所 | 頭数 | 時計5 | 時計4 | 時計3 | 時計2 | 時計1 | ←の平均 |
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2019-05-29 | 南W | 423頭 | 36.773 | 29.497 | 28.216 | 27.86 | 22.256 | 28.92 |
2019-10-23 | 南W | 490頭 | 33.196 | 32.862 | 28.299 | 32.111 | 31.617 | |
2019-12-18 | 南W | 446頭 | モヤ | 50 | ||||
2020-05-13 | 南W | 463頭 | 30.429 | 30.1 | 30.296 | 39.097 | 32.48 | |
2020-06-03 | 南W | 458頭 | 39.271 | 37.822 | 36.049 | 37.522 | 37.666 | |
2020-10-28 | 南W | 515頭 | 24.813 | 26.519 | 25.624 | 36.48 | 28.359 |
アーモンドアイの一番上の2019/5/29の時計4は「65.8」。この65.8は2019/5/29の南Wで追い切られた423頭の偏差値を出すと「29.497」になる。偏差値は手数が高いと高くなり、時計の価値としては、偏差値が低い方が価値は高くなる。同様に5~1についても偏差値を出すと、上記のように「36.773 – 29.497 – 28.216 – 27.86 – 22.256」。これの平均を取ると「28.92」。見かけの時計で速かったヴィクトリアマイルの2020/5/13の平均は「32.48」で、全体としては、やや遅め。偏差値で見ると、結局2020/11/1・天皇賞秋の時のモノが最も低く(価値としては高く)なる。
さらに「強さ」によって補正を掛けている。表には書いていないが、アーモンドアイの場合ほぼ「馬なり」なので、各時計の平均そのままが時計の価値になる。
アーモンドアイの最終追い切りは毎回「水曜」に行われているので、偏差値の平均(右端の数値)を比較すれば、その調教の時計が速いか遅いかが大体わかる。今回は最終追い切りだけを比較したが、中には1週前に速い時計を出して最終追い切りが遅い厩舎もあるので、中間含めてチェックしている。
有馬記念時の「モヤ」で時計がない場合や、連闘で時計を出していない場合は、平均の「50」として扱っている。連闘時に関しては、1週前と同じ状態で出走していると仮定して、同じ数値にしても良さそうに思うが、この辺りは今後の課題で、どっちが良いか検証を進めていく。
調教時計が速いか遅いかがわかるが、じゃぁ何で時計が速くなったのか…が問題になってくる。
休養明けでレース勘を戻すのに時計を出した、状態が良くなって時計が出た、馬が成長して時計が出た、理由はいろいろ考えられる。「馬が成長したか」は成長する時期なのかどうか、データと一緒に見ると、見えてくるモノがある。