中央競馬の3歳未勝利戦が終わる8月・9月。未勝利戦を勝ちきれなかった3歳馬は、そのまま中央に残って1勝クラスに挑むか、地方競馬へ移籍するか、あるいは乗馬など第二の道を歩むことになる。
近年は引退馬支援の取り組みも広まり、競走馬としてのキャリアを終えたあとも、さまざまな形で活躍する馬が増えてきた。
今回は「中央競馬から地方競馬へ転入した初戦」の成績をまとめた。
集計条件を正確に書くと、
・今回の所属が「地方」
・前走が中央競馬のレースであり、所属も「中央」
であった馬を対象に、過去10年間(2015/11/10~2025/11/10)のデータを集計している。
なお、中央→地方→中央→地方という経歴の馬がいた場合は、2回分カウントされている可能性がある点はご容赦いただきたい。
中央競馬では「新馬・未勝利・1勝クラス・2勝クラス…・オープン」と全国共通のクラス分けだが、地方競馬では地域ごとにクラス体系が異なる。そのため、転入時の格付けによって成績に差が出るのでは?という疑問もある。私もそう思うので、今回はまず全体像として「クラスを問わず」各地方競馬場ごとの転入初戦成績を見ていくことにした。
◎中央から地方への転入馬
対象期間:2015/12/09 ~ 2025/12/09
| 競馬場 | 1着 | 2着 | 3着 | 4下 | 出走数 | 勝率 | 連対率 | 3内率 | 単回 | 複回 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 門別 | 399 | 338 | 262 | 1232 | 2249 | 17.7% | 32.8% | 44.4% | 68.4円 | 73.1円 |
| 盛岡 | 298 | 217 | 169 | 622 | 1315 | 22.7% | 39.2% | 52.0% | 75.9円 | 81.2円 |
| 水沢 | 228 | 172 | 145 | 530 | 1092 | 20.9% | 36.6% | 49.9% | 84.7円 | 79.8円 |
| 浦和 | 138 | 90 | 71 | 474 | 775 | 17.8% | 29.4% | 38.6% | 69.5円 | 69.4円 |
| 船橋 | 208 | 168 | 140 | 807 | 1336 | 15.6% | 28.1% | 38.6% | 75.1円 | 72.7円 |
| 大井 | 256 | 203 | 160 | 1569 | 2218 | 11.5% | 20.7% | 27.9% | 55.8円 | 62.0円 |
| 川崎 | 187 | 150 | 106 | 856 | 1315 | 14.2% | 25.6% | 33.7% | 67.0円 | 63.6円 |
| 金沢 | 543 | 361 | 288 | 949 | 2161 | 25.1% | 41.8% | 55.2% | 82.8円 | 80.3円 |
| 笠松 | 442 | 323 | 227 | 769 | 1780 | 24.8% | 43.0% | 55.7% | 73.9円 | 80.6円 |
| 名古屋 | 615 | 476 | 375 | 1713 | 3195 | 19.2% | 34.1% | 45.9% | 63.1円 | 75.4円 |
| 園田 | 584 | 486 | 409 | 2840 | 4365 | 13.4% | 24.5% | 33.9% | 58.6円 | 61.7円 |
| 姫路 | 35 | 26 | 23 | 220 | 313 | 11.2% | 19.5% | 26.8% | 82.8円 | 48.8円 |
| 高知 | 564 | 390 | 292 | 1064 | 2327 | 24.2% | 41.0% | 53.5% | 68.8円 | 77.0円 |
| 佐賀 | 479 | 315 | 265 | 1323 | 2424 | 19.8% | 32.8% | 43.7% | 70.4円 | 76.7円 |
◆分析・考察
上記の表を見ると、南関東(浦和・船橋・大井・川崎)の4場は勝率・連対率・3着内率ともに明らかに低く、中央からの転入馬であっても苦戦傾向が見られる。これは、南関地区が全体的にレベルが高く、転入直後の馬では地元の上位勢に太刀打ちできないケースが多いことを示唆している。
一方で、盛岡・水沢・金沢・笠松・高知といった地方では、勝率20%を超える優秀な数字を残しており、「転入初戦から通用しやすいエリア」と言える。特に金沢と笠松は連対率・3着内率ともに40%・55%超と、突出して高い水準だ。
また、単勝・複勝回収率に注目すると、どの競馬場も100円を超えるものはなく、概ね70〜80円前後に収まっている。つまり、人気先行になりやすい中央転入馬を“儲けの視点”で狙うのは難しいということだ。
ただし、水沢(単回85.8円)や金沢(82.9円)のように比較的回収率が高い競馬場もあり、「転入馬が実力を発揮しやすい環境」として注目できる。
逆に大井・川崎・園田・姫路では勝率・回収率ともに低調で、転入初戦から勝ち切るのは容易ではない。南関や兵庫勢は全体的に層が厚く、転入馬が中央出身というだけで通用するとは限らないだろう。
次の分析では、「競馬場別にクラス別(格別)(例:A級・B級・C級など)」に注目してみる。























