スピード指数で「荒れるレース」を見抜くには?
『タイムが遅いと波乱 配当と時計の深い関係』で述べた通り、1着馬の走破タイムが遅いレースは、波乱の傾向が強いことがデータから明らかになりました。
では、どうすれば「メンバーのレベルが低い=時計の遅い決着になりそう」と見抜けるのか?という点が次の課題になります。
もちろん、『先週の結果分析』のように過去のレースに対してABCDEでランク付けするのも一つの方法です。ただ、これは中央競馬だけであり地方競馬ではデータがない、また予想段階で勝ち馬を選ぶにはやや大雑把で比較しづらい面があります。
そこで活用したいのが、自作のスピード指数です。
要するに、「そのクラスの基準となるタイムを出せる馬がどれだけいるか」が分かれば、メンバーのレベルをある程度数値化できます。そのために、まずはクラスごとのスピード指数の基準値を用意し、出走馬の指数と照らし合わせて:
- 基準を上回っている馬は何頭いるか?
- 基準を下回っている馬は何頭か?
といった形でカウントしていけば、『先週の結果分析』のタイムランクDやEに相当するような“タイムランクの低いレース”を事前に見抜くヒントになるのでは、という発想です。
【2歳】
クラス | 最大 | 平均 | 最小 | 対象R |
---|---|---|---|---|
新馬 | 86.0 | 45.9 | -3.2 | 1,258 |
未勝利 | 82.8 | 53.4 | 1.7 | 1,641 |
1勝 | 89.7 | 67.6 | 41.5 | 155 |
OP | 89.7 | 63.9 | 34.7 | 68 |
OPL | 81.3 | 67.5 | 56.7 | 10 |
G3 | 85.0 | 69.1 | 46.5 | 38 |
G2 | 86.0 | 77.1 | 69.0 | 14 |
G1 | 92.3 | 80.2 | 68.0 | 15 |
【3歳】
クラス | 最大 | 平均 | 最小 | 対象R |
---|---|---|---|---|
新馬 | 69.0 | 43.4 | -1.7 | 231 |
未勝利 | 90.5 | 56.7 | 6.8 | 4,058 |
1勝 | 95.2 | 70.1 | 28.0 | 620 |
OP | 92.9 | 81.5 | 68.0 | 20 |
OPL | 95.3 | 75.5 | 42.1 | 80 |
G3 | 100.7 | 79.9 | 63.6 | 70 |
G2 | 96.8 | 80.6 | 62.9 | 56 |
G1 | 114.7 | 88.0 | 66.3 | 35 |
【3歳以上】
クラス | 最大 | 平均 | 最小 | 対象R |
---|---|---|---|---|
1勝 | 146.2 | 67.9 | 20.2 | 2,409 |
2勝 | 106.7 | 75.5 | 14.8 | 1,321 |
3勝 | 106.0 | 82.4 | 53.8 | 588 |
OP | 115.3 | 88.6 | 58.0 | 144 |
OPL | 106.6 | 87.9 | 69.4 | 124 |
G3 | 114.0 | 88.2 | 65.0 | 134 |
G2 | 106.7 | 87.6 | 51.7 | 55 |
G1 | 118.4 | 97.1 | 78.5 | 45 |
【4歳以上】
クラス | 最大 | 平均 | 最小 | 対象R |
---|---|---|---|---|
1勝 | 97.7 | 67.4 | 34.5 | 1,436 |
2勝 | 100.4 | 76.7 | 39.0 | 1,010 |
3勝 | 101.6 | 84.0 | 53.5 | 460 |
OP | 111.3 | 89.1 | 44.0 | 113 |
OPL | 104.3 | 88.8 | 66.0 | 98 |
G3 | 113.4 | 90.8 | 60.8 | 86 |
G2 | 109.6 | 91.2 | 55.0 | 57 |
G1 | 114.5 | 95.3 | 69.9 | 24 |
中央競馬の場合は、競馬場ごとにクラスの基準が異なることはなく、全場共通の基準で組まれているため、クラス別にスピード指数の基準値を設定するのは比較的容易です。一方で、地方競馬では競馬場(開催エリア)ごとにクラス編成のルールや基準が異なるため、競馬場・クラスごとに個別の基準を設定しています。
地方競馬に関しては、競馬場×クラスで表の項目が非常に多くなってしまうため、本記事では掲載を割愛し、別途一覧として掲載します。
実際にこの基準値を使ってみた例として、2025年6月22日(日)函館12R(3歳以上1勝クラス・牝馬限定戦)を取り上げてみます。
以下はレース前時点での、出走馬の近5走のスピード指数をまとめたものです。
このレースの「3歳以上1勝クラス」における基準スピード指数は「67.9」。この数値を基に、出走馬の近5走の指数と比較してみると、近4走以内で基準を上回っている馬は1頭もいません。唯一、3番ヒヒーンの5走前に「69.8」という指数があるのみです。この時点で、出走馬のレベルがクラス基準に達していない=決着時計が遅くなる可能性が高いレースであることが、事前に予測できます。
実際のレースでは、平均よりやや速いペースで進んだものの、ラスト4ハロンのラップが「12.7 – 13.1 – 12.9 – 12.7」とかかり、バテた馬が多く、最終的な決着時計は遅くなりました。
結果は以下の通りです:
- 1着:1番人気 ネクストダンサー
- 2着:10番人気 ランスノーブル
- 3着:2番人気 ケープウィッカム
- 4着:8番人気 デルマサクラサク
- 5着:9番人気 ヒヒーン
上位には人気馬(1番人気・2番人気)も残っていますが、それ以外は人気薄の馬が多数上位に食い込んでおり、波乱含みのレースとなりました。なお、2着に入ったランスノーブルは、展開が向いてメンバー中最速の上がりを記録。4走前にハイペースのレースで「63.3」の指数をマークしていたことからも、展開次第では差し込める力を秘めていたと考えられます。勝ったネクストダンサーのスピード指数は「57.0」。やはり水準以上で走る事は難しかったようです。
このように、レース前にクラス基準のスピード指数と出走馬の近走指数を比較することで、メンバーの力量やレースの荒れやすさをある程度見極めることが可能です。馬券検討の際の一つの目安として、非常に有効な指標と言えるでしょう。